ムダマハギ型漁船の断面構造は、各分布地域によって違いがあります。これまでに行った報告では(※)、ムダマハギ型漁船の断面構造を3種に分類していましたが、今回の収集結果において青森県西海岸地方のイソブネを加え、4種の分類に改めました。これは、シキの部分の掘り込み(溝)を、ムダマと称する事例を重視したことによります。
断面構造模式図 構造の特徴
(A)
ムダマにタナイタを一枚接合した構造で、ムダマハギとしてもっとも一般的な構造です。地域分類では秋田県北部、津軽海峡沿岸の地方に分布しており、地域的にも最も広範囲に分布しています。
(B)
秋田県北部・青森県西海岸地方のなかで、特に青森県側に多い構造で、シキにシタダナ、ウワダナが備わったシマイハギ構造ですが、シキとシタダナは水平に接合され、ヒラタハギとも称されます。また、シキの中心線には溝が掘られており、この溝、またはシキそのものを「ムダマ」とも称しています。構造的にはムダマハギの要素が少なく、ほとんどシマイハギ構造に変化していますが、シキの部分にムダマの名残を残していることから、ムダマハギからシマイハギへの過渡的段階の構造として考えられています。
(C)
津軽半島西北部のイソブネの断面構造です。ムダマとウワダナの間に必ずシタダナをつけます。ムダマにタナイタを二枚接合しているのが特徴で、一見シマイハギの印象を受けます。また、アバラを取り付けます。
(D)
岩手県久慈市から青森県三沢市にかけて分布するカッコに見られるもので、ムダマにハラキと称する補助材を接合しこれにタナイタを一枚接合した構造です。ハラキはムダマと一体化していて、他地域に見られるシタダナとは異なります。また、船体の断面構造で他地域と異なるのはアバラの代わりにフナバリと補強用のマズラを装着するのことです。フナバリとマズラをつけるのは、棚構造の和船に一般的な構造でよりタナ造りの構造船に近いといえます。この構造は、先に述べた青森県西海岸地方のイソブネ同様、ムダマハギからシマイハギへの過渡的な段階を示すものとして注目されます。





(※) 昆政明「青森県のムダマハギ」『民具マンスリー』第20巻6号 1987
同上「津軽海峡沿岸の漁船」『日本民俗学』第189号 1992