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平成13〜14年の2ヵ年計画で「ムダマハギ型漁船建造技術の記録保存および公開事業」(日本財団助成事業)を行いました。
この事業は、近年急速に失われつつある日本古来の和船建造技術を記録保存するとともに、博物館内に展示、公開することによって、和船に関する知識の普及や造船技術の伝承を行うことを目的としたものです。
平成13年は、実際の造船および記録、実測図作成を行いました。
「ムダマハギ型漁船」とは、丸木舟を浅くしたような形の船底部材に、波よけの板をつけた、北日本地域独特の構造をもつ船であり、今回製作されたのは、1〜2人乗りで磯漁に使う、この地方で「イソブネ」と呼ばれる小型漁船です。くり抜きの船底が厚くて丈夫であるため荒い磯浜に耐えられ、重いため波に流されず安定し、磯漁をする漁師にとって大変使い良いと言われます。しかし近年FRP船の普及により、新造されることはほぼなくなり、浜にもわずかに残るだけとなり、消失状態にあります。
当館では、平成6年より木造漁船の収集を行い、ムダマハギ型漁船を中心に、その先行形態であるマルキブネや、ムダマハギ型漁船を継承して船型にその影響を色濃く残すシマイハギ型漁船のコレクションを有しています。うち67隻は、平成9年に国の重要有形民俗文化財に指定されています。
図面をひかずに木造船を造る船大工も、現在若い方で70歳を超え、造る技術はもっているものの、注文がないため仕事として造ることはなく、また体力的に造ることができなくなってしまった方、また亡くなった方も多いという現状です。
このような中、ムダマハギ型漁船の造船過程とそれを造る船大工の技術を、より正確に記録に残すという今回の事業は急務と言えました。
製作は、函館市の平石健悦氏(平石造船)に依頼しました。平石氏は昭和5年生まれで、ムダマハギ型漁船の分布地域である津軽海峡沿岸地域において、現役最後の船大工です。木造船の全盛期、函館漁港に9件あった造船所も、現在は平石造船ただ1件残るのみとなりました。未だ木造船を使い続ける漁師から修繕等の仕事を受けているものの、現在は、新造の注文は全くなくなったといいます。また船を造るための材料も揃わなくなり、体調もあまりすぐれないという問題もあり、今回の製作を最後に現役引退を決められたことは残念なことであります。

船大工 平石健悦氏
製作は下記の日程で行なわれました。(※7月に平石氏が体調を崩され、当初予定より2ケ月程延長しています。)現存する木造船の多くは、船外機を装着するために改造した船型となっていますが、今回は無動力時代の船型で造船し、櫓櫂および帆装の復元も行ないました。
■4月14日…製材
■4月16日・・造船所での作業開始。船底部材(ムダマ)を荒削りし、この後1ヶ月程乾燥させました。
■5月26日…チョウナダテ
船底部材(ムダマ)を乾燥後、整形して仕上げる前に行なわれる儀式です。昔は、コビキ(木挽き)が、材を用意したため、船大工の仕事は、この船底部材(ムダマ)の整形からが始まりでした。その名残でこの儀式が残るといわれます。船大工自身が行ないます。

ムダマの製作
■6月11日…ダイノセ
| 船底部材(ムダマ)に、船首材(ミヨシ)、船尾材(トコ)を取り付けた後、台(バンギ)の上に乗せ、天井や壁から棒でつっぱりをかけて固定します。これが船の基礎部分となり、今後の作業の要となるため、この段階で儀式が行なわれます。この後、舷側板(カイゴ)を取り付けていく作業となります。今回は神主により正式に行なわれましたが、船大工自身が行なうこともありました。 |

ダイノセ |
■10月31日(大安)…ダイオロシ(進水式)
神主の祝詞、玉串奉納、船上からの餅まき等が行なわれ、船を船首(オモテ)から進水させました。ダイオロシは日を選んで行なわれます。今回も大安を選びました。船を進水させる時は必ず船首(オモテ)から進水させます。
このような正式な形でのダイオロシも現在ではめったに行なわれず、おそらく今回が最後ではないかと考えられます。また、もともとイソブネのような小型船の場合は、船主によっては行なわない場合もありました。

船底部材(ムダマ)、舷側板(カイゴ)、化粧板など船体の大部分が杉です。
今回、ムダマは製材所から杉材を調達し、カイゴは平石さんが造船所内に保管していたものを使用しました。また船首のミヨシや船尾のトダテはヒバを使用しています。平石氏によると、ヒバまたはヒノキを使用することで船を美しく見せ、値打ちを上げる意味もあるといいます。また船体の補強材(アバラ)、舵、舵の付く所(トコ)は、乾燥すると堅いクリを使用しています。本来トコは赤松が最適であるといわれます。舵を動かした時に、適度にアブラがあって滑りがよく、摩擦で擦り減りにくい木が向くそうです。舵はナラやカシを使うことが多かったといわれます。またアバラは、本来ヒバの曲がり木が最適で、山の斜面に生えるような根曲がりをそのまま利用したものが、強度が強く特によいが、現在は入手し難いそうです。枝曲がりは比較的入手しやすいものの節がありあまり良くないといいます。昔はヤマゴと呼ばれる人がいて、ちょうど使い良い木を見つけたそうですが、現在はヤマゴもいないので、船大工自身が、製材所または山で探すため、調達が困難だと平石氏は言います。
また和船専用の船釘についても、現在船釘を作る鍛冶屋も廃業し、入手困難となっています。今回は平石さん自身が所有していたものを使用しましたが、足りない分については、廃船から抜いたものを磨き、新たに亜鉛をかけたものを使用しました。漆も現在入手し難く、平石氏も近年は接着剤を使用しているといいます。
今回の建造作業は、全てデジタルビデオと写真に記録し、ビデオ映画として、展示編(10分)、講習編(30分)、技術編(90分)の3バージョン、イラスト中心の普及図書、パソコンで自由に造船を学べるCD-ROMを作成しました。
また館内にコーナーを設け、新造船を一般公開し、写真パネル、ビデオ上映、CD-ROMなどにより、ムダマハギの建造技術について紹介しました。
8月1日〜9月1日は船の科学館(東京)のご協力により、同館にて移動展示会も実施し、9月14〜15日には体験乗船会の試乗船のひとつとしてご利用いただきました。
また、10月26〜27日は、当館にて造船体験会を行い、青森市の船大工、藤田さんの指導のもと、船大工独特の技に多くの方々が挑戦しました。11月3日は、野外プールにて完成した船の試乗会を行い、体験会に参加した方々はじめ、子供達も集まり、みんなで次々に乗ってみました。思った以上の安定の良さに拍手がわきました。
また、同じく11月3日は、昆政明先生(全国和船研究会)による講座を開催し、ビデオ上映会も行いました。

体験乗船会(船の科学館) |
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造船体験会(小屋のハリを利用して、船を固定します) |

試乗会(野外プール) |
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